ディレイラーの話
      (トップノーマル・ローノーマル)             

     
          2007.3.14  更新


ギヤ比の話で多段式ギヤの数値的効果がわかったと思います。
しかし、多段式ギヤが稼働するためには多数のギヤ間でチェーンをかけ替えさせなければなりません。ここではそのメカニズムを明らかにしてみましょう。また変速するとは一体どういうメカニズムなのでしょう?

第1図



第1図は多段式ギヤの大小のギヤにチェーンをかけたときの状態を簡単に示したものです。前のトップギヤ(A)と後ろのローギヤ(C)をかけたとき(A:C)と、前のローギヤ(B)と後ろのトップギヤ(D)をかけたとき(B:D)とは見るからにチェーンの長さが違いますね。A:C状態のチェーンの長さのままB:D状態にしたらチェーンがたるんでしまうのがわかると思います。
前ギヤの力を後ろギヤに伝えるにはチェーンがピンと張ってないと伝わりません。ちなみに第1表のギヤ・テーブルから読むとA:C状態は42+34=76。B:D状態では22+11=33で、その差76−33=43の半周分づつである22駒近くがたるんでしまうことになります。そのたるみを吸収してピンと張る役目を担っているのが外装変速機(ディレイラー)なのです。

ギヤ・テーブル(第1表)

11 13 15 17 20 23 26 30 34
42 3.82 3.23 2.8 2.47 2.1 1.83 1.62 1.4 1.24
32 2.91 2.46 2.13 1.88 1.6 1.39 1.23 1.07 0.94
22 2 1.69 1.47 1.29 1.1 0.96 0.85 0.73 0.65

数式=前ギヤ÷後ギヤ

変速機には後ろの車軸内部でギヤのかみ合わせを替えてしまう内装変速機もありますが、ここではスポーツサイクルに多用されている外装変速機について話を進めます。
多段式ギヤ間でチェーンをかけ替えるということは、ひとつのギヤにかかっていたチェーンを脱線(derailment)させて別のギヤにかけるという作業になります。そのため外装変速機のことをderailmentさせる機械derailer(ディレイラー)というのです。
このようにディレイラーには多段式ギヤ間でチェーンをかけ替える作業(第2図)と歯数差を吸収してチェーンに張り(tension)をもたせる役目(第3図)があります。このふたつの役目をこなすのがリアディレイラーのガイドプーリー(guide pulley)とテンションプーリー(tension pulley)です。
第2図 第3図


ディレイラーにギヤ間のかけ替えを指示するのはシフター(shifter)の役目です。そしてその指示はシフトワイヤーを通してディレイラーに伝わります。ワイヤーを引っ張ったときとゆるめた時の差を吸収するためにディレイラーの各所にはスプリングが使ってあります。

ワイヤーを引っ張ったときは強制的にディレイラーを動かしますから動きはスムーズですが、ワイヤーをゆるめたときはスプリングが元に戻る力で動きますので反応はやや鈍くなります。また大きなギヤから小さなギヤにかけ替えるときに較べ、小さなギヤから大きなギヤにかけ替える方がはるかに大きな力が要ります。つまり大きなギヤにかけ替えるときにワイヤーを引っ張る方がスムーズなチェンジができるのです。

この論から言うと後ろギヤの場合はロー側の大きいギヤに入れるときにワイヤーを引っ張る方がスムーズに動きますし、前ギヤの場合はトップ側の大きいギヤに入れるときにワイヤーを引っ張る方がスムーズな動きになるのです。

しかしチェーンをかけ替えるにはチェーンが少したるんでないと動きません。坂道などでチェーンに力がかかっているときにはチェーンはたるみにくくなります。つまりローに入れるときはワイヤーを引っ張る方が前後とも素早いチェンジになるのです。

ディレイラーにはワイヤーを引っ張ったときにロー側に動くものとトップ側に動くタイプがあり、それぞれスプリングが引っ張られていない状態を正常(normal:ノーマル)という考え方からトップノーマル(TN)・ローノーマル(LN)といいます。

私は坂道でスムーズにチェンジできた方が良いので前後ともトップノーマルのディレイラーの方が好きです。初代ランドナー・ワンダーフォーゲル号は逆に前後ともローノーマルでした。坂道でロー側にチェンジしようとしてもナカナカ変わらず苦労しました(ー_ー) その経験から次のアルプス・クィックエースでは前後ともトップノーマルのディレイラーを起用しました。

このように私はトップノーマルが好きですが、静止状態からスタートするときはローの方が発進しやすいので、ローノーマルの方が望ましいという考え方もあります。またツーリング中にシフトワイヤーが切れるとノーマル状態に戻って(自動的にチェンジして)固定してしまいます。そのときローがいいかトップがいいかは論が分かれます。山坂ならローがいいし平地ならトップの方がいいでしょう。もっともそういうときはチェーンを切り詰めたりして希望のギヤにかけておくよう調整するのですが・・・・

あと少しお話を続けます。このノーマル(normal)状態ですが、ディレイラーのスプリングはノーマル(normal)状態がベストコンディションです。なぜならスプリングが伸びたまま保管していると、スプリングはだんだん伸びた状態が普通になって、元に戻る力が弱くなってしまうからです。まるで充電式のニッケル水素電池のようですね(ー_ー)、ですから走り終わったときにはノーマル状態に戻すようにしておくと、ディレイラーがいつまでも元気でいてくれますよ(^^;)

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