暗峠(くらがりとうげ)  455m (2005.5.8) 地図 

奈良県生駒市小瀬町−大阪府東大阪市豊浦町
奈良・大阪間を最短距離で結ぶ暗越奈良街道は現在でも国道とは名ばかりの酷道である。

それというのも奈良・大阪間に横たわる生駒山地が断層山脈で、傾斜が大変急であるため、峠越の道程も急傾斜にならざるを得なかったからである。
平城宮・朱雀門から見た生駒山地(暗峠の鞍部が見える)



奈良を出発した暗越奈良街道(現国道308号線)は暗峠の前にある矢田丘陵を榁木峠で越え、生駒市小瀬町からいよいよ暗峠の登りにかかる。

相変わらず、とんでもなく狭い道を入っていく。アスファルトの2車線路もたまには現れるが、たいていはスリップ防止を兼ねた二重丸のコンクリート舗装だ(^^;)
生駒市小瀬町交差点から(10:00) 珍しく奇麗な路面(10:18) スリップ防止のコンクリート舗装(10:21)



それでも中腹には、石造阿弥陀如来像とか芭蕉の句碑など街道情緒を味わえるようなものが出てくる。
阿弥陀如来像(10:33) 芭蕉句碑(10:40



こんなところに思いもかけず棚田が拡がっている。もちろんそうじゃなきゃ田圃なんか作れないけどね(~_~) 地形的には谷を遡るとはいえ、切り立った谷ではなく、斜面をトラバースする道になっている。

峠の手前に信貴生駒スカイラインが通っていて、峠道はそのガード下を潜る。その脇には「峠」という名の喫茶店。茶店の現代版だね。
棚田の横を登る(10:42) 喫茶店「峠」(10:55)



スカイラインのガード下を潜ると、峠だった。峠付近だけ石畳があるが、コンクリートで固めたものなので、イマイチ有り難みはない。熊野古道と較べると大したことはない。もっとも馬籠の石畳よりはましである。

ここには峠の石碑や境界表示板などが建っている。またいわゆる茶店があって、抹茶などを楽しめる。
暗峠の石畳
暗峠の石畳(10:57)
記念に撮って貰った(9:00) 暗峠の石碑と茶店(9:02)



峠を越えると緩やかに下りが始まる。石畳もすぐに終わり、二重丸のコンクリート舗装になると、「和州矢田山出迎え地蔵尊」のお堂がある。手頃な大きさの常夜灯があって、「中峠」と刻んであった。また暗峠の案内板も建ててあり、峠の喧噪もないのでここで食事をした。目の前の棚田では田起こしの真っ最中だった。

食事を終え、コンクリート舗装をそのまま下ると、アスファルト舗装路との交差点に来た。国道の方が幅・規格ともにお粗末という有名なポイントだ(--;)
「和州矢田山出迎え地蔵尊」のお堂(11:02) ビックリの交差点(11:18



そこから先は噂に違わぬ劇坂のオンパレード。停まるのさえ容易ではない。クランク状の下りがあったので、ようやく停まって撮った写真がこれ。殆どがこれくらいの傾斜である。大阪の町が見えるが、真っ逆様に落ちていく感じである。

こんな傾斜だからスピードも出せないし、出ないようにブレーキをかけるのにもの凄く力が要る。ブレーキをかけ続けてるということは・・・「はっ」としてリムを触ると「チンチン」に熱い。もちろんタイヤだって熱い。ブレーキゴムが熔けることはなかろうが、熱でチューブが破裂したりすることは十分考えられる。むむむ、暗峠、おそるべし。

で、下りというのに休み休み下る羽目となった。
忍のダウンヒル。麓の茶店が現れた辺りでもこの勾配だもの・・・
劇坂(11:22) 大阪の町(11:32) 麓の茶店(11:37)



本当の麓かな?と思える地点は近鉄奈良線のガードに辿り着いた所だった。見返った先には今まで苦闘してきた狭くて急なコンクリート道があった。本当に噂に違わぬ劇坂・酷道だった。期待を裏切らないと言う意味ではこれほどエンターテイメント性を備えている街道はない。野次馬的感情からすれば、いつまでも改修せずにいてほしい遺跡のひとつである。
近鉄奈良線のガード(11:41) 登り口(11:41)