東の川越(うのがわごえ)・白屋越(しらやごえ)・足之郷越(あしのこごえ) 970m (2005.9.23) 地図

奈良県東吉野村小(おむら)−奈良県川上村武木(たきぎ)


奈良県東吉野村小(おむら)と川上村武木(たきぎ)とを結ぶ、林道武木小川線の尾根伝いに点在する峠たちである(足ノ郷道、旧東熊野街道にあり、東吉野村役場付近は天誅組終焉の地らしい)

東吉野村、丹生川上神社から四郷川方面へ高見川を渡り、すぐに道と進行方向と逆方向の林道に入る。


のっけから劇坂急勾配である。早期に尾根筋へ上がるためで、典型的な峠の裏的造り方である。道は舗装の1車線で落石・木々や葉っぱなどが酷いかと思ったら大したことはなかった。
林道入り口



とにかく尾根筋まで登るのが大変で、登ったら登ったで、アップダウンもあり、最初の峠・東の川越はピークではあるものの峠とは気付かず、写真を撮り損なった。そして尾根筋というのに展望が効かない。本当は高見山がチラチラ見えるそうなのだが、曇ってるせいか全く見えないのだ(ToT)

途中、白屋岳の登山案内看板が出ていた。2番目の峠・白屋越も全く気付かなかったので、この看板付近が峠なのかと思った。
白屋越 まだまだ林道は登る



さらに林道は登る。登りに登ると祠が出現した。これなら馬鹿でもわかる。ここが最後の峠・足之郷越らしい。

祠に掛けられた幕の青さがこの山間には不釣り合いに見えた。それほど鮮やかな色合いであった。祠にはお地蔵さんが祀られていた。赤い帽子と前掛けが幕の青と同じように刺激的であった。
足之郷越 祠とお地蔵さん



3つの峠のうち、2つの峠はどちらも川上村側の集落名(東川・白屋)からネーミングされていた。しかし足之郷越はどんなところから付けられたのだろうか?

勝手に推測してみよう。
集落や谷などに該当する名前がなければ地形から考えてみる。白屋越辺りから見えたかもしれない姿(地図ソフト・カシミールのシュミレーション)であるが、白屋岳(1176m)を足首と見立てると、そこからなだらかに下った曲線は足之郷越の先で指のようにキュッと上がっている(1038m峰)。峠はその足の甲の部分を越えているから「アシノコウゴエ」と呼ばれるようになった。後世それに漢字を振ったとき足之郷越と転じたのではなかろうか?
白屋越から見えそうな地形(byカシミールのカシバード)



峠地名考で書いたように日本の地名はそこに住んでいた人がネーミングしたもので、始めは表音語であった。それが後世に表記文字で記されるようになったとき音が似通った漢字が当てられたのである。よってその意味を漢字だけで解くと、とんでもない解釈になるので気を付けなければならない。

最近読んだ本『山の名前の謎解き事典』谷勇二 青春出版 にも同じようなことが書いてあった。
たとえば『ゴロゴロの山』、文字通り岩がゴロゴロしている有様で、北アルプスにある野口五郎岳とか黒部五郎岳には氷河でできたカール(圏谷=U字谷)があって岩がゴロゴロしているから五郎岳になったんだという。でも同じ五郎岳が近くにあっては区別できんために地域名を頭に付け、黒部の五郎岳とか野口(大町市の野口村、大町温泉郷の南)から見える五郎岳としたわけだ。また箱根の強羅も岩ゴロゴロの系列だという。
大町ダム付近から見えそうな風景(byカシミールのカシバード)



しかし、ネットのお友達oookaさんから、「ここはアシノコと読むようですよ」と情報を頂いた。
確かに「アシノコ」でも面白い。あの稜線も「足の弧」と考えたら「足の甲」よりそれらしく思える。でも漢字に騙されるなと言ってる本人が「足」にこだわってちゃいけないね(^^ゞ

「芦ノ湖」そんな湖沼は山上にはありません。では・・・「ノ」は「東川」で「ウノガワ」と読むように単なる接尾語?。「コ」は「処」で場所の意。「アシ」は1000m近い処に「葦」はあまり生えてないでしょうから、悪しきの「アシ」。併せると「悪しきところ」つまり悪路の意味かなあ?尤も「葦」が生えるような足元が悪い処と解釈してもいいけど・・・皆さんはどぉ思われます?

さあて問答はこれくらいにしておいて・・・
峠から下り始める。東吉野村側が尾根筋であったのに対し、川上村側は武木川沿いに下る。つまり谷筋であり、峠の表裏理論ではこちらが表側ということになる。

武木川もはじめはチョロチョロとした溝のような谷であった。それが下るに従いドンドン深くなり、林道も谷の中腹を走るようになる。そのため雄大な大峰山系を正面に見ながら下ることになり、とても気持ちが良かった。
武木小川林道・大峰山系を眺めながら下る
大峰山系を眺めながら下る



ドンドン下り、ひさかたぶりの集落に出会う。案内看板には「タキギ」のフリガナ。日本の地名は難しい(^^;)。さらに下って、武木川が吉野川と合流する地点で武光橋を渡り、国道と合流した。

ネットのお友達cancanさんからも情報を頂いた。
この「武光橋」は「タケミツバシ」ではなく「ブコウバシ」と読むんだそうだ。武木川(タキギガワ)と井光川(イカリガワ)が吉野川に合流する所に架けられたからとのこと。市町村合併みたいなネーミングには笑ってしまうね(^^;)
武光橋を渡り、国道168号線と合流する