温見峠(ぬくみとうげ) 1019m(1978.7.25、2001.10.21)  地図 2.5万図

岐阜県本巣市根尾大河原−福井県大野市温見
越美県境を越える国道157号線の峠である。根尾川源流部から大野市を結んでいて、道筋の過激さゆえに酷道としても名高い。またNC誌の故今井編集長の思い入れの峠でもある。
温見峠へは就職して3年目の夏に初めて行った。樽見鉄道の終点、樽見から峠へは約30q。しかし温見峠の麓、黒津に辿り着くまでにまだ断崖絶壁の谷を上り下りする倉見峠が存在していた。

倉見峠は今でもこの国道の中で一番道幅が狭く、ガードレール欠損箇所も多い場所だ。おまけに当時はダートで、材木を満載したトラックが走っていたので生きた心地がしなかった。
倉見峠
また大河原から先に何ヶ所かある道を乗り越す谷川も当時はほとんど河原状態であった。

敦賀で海水浴をしてきたカップルが渋滞回避のため、この峠道に入ったのは良いが、あまりの暑さにこの谷川で水浴びをしていたほどワイルドであったのだ。
今回初めて福井県側からアタックした。

真名川ダムの麻那姫湖を過ぎる所には「大型車通行不能」の文字があった。しかし雲川ダムのあたりではバイパストンネルが造られていて昔と較べると雲泥の差である。もちろん2車線道路に風情などはないが舗装してあるのはありがたい。熊河(くまのこ)付近で小さなピークを過ぎる。お地蔵さんがあるので昔からこのルートだったのだろう。

いよいよ温見川の谷である。茫漠とした谷底平野を進むと山が左右から迫ってくる。温見の集落?だ。定住してるとは思えないが、作業をしている男女が数人。老人ではなくむしろ若手だ。アウトドア産業か酪農というような感じである。
温見の集落を過ぎるといよいよ本格的な登りだ。峠の鞍部もきれいに見えてくる。

しかし、この道、山の東側斜面にへばりつくように作ってある。そのくせ九十九折れでなく、わりと直線的なので勾配の変え方が突如というほど乱暴でガードレールのないところが多い。
簡易コンクリート舗装の路面はヒビ割れ状態だし、所々に架かるコンクリート橋も欄干は破損している。もちろん道幅は車同士のすれ違いが困難なほど狭いし、谷を見ると吸い込まれそうなので見たくもない。

峠近くまで来ると道は西側斜面に移る。こちらはヘアピンカーブを多用した九十九折れだし、道幅も広く生き返った心地である。振り返れば登ってきた道が一望にできて気持ちよい。
登りもあと少し。峠に出ると福井県側にだけ県境表示がある。峠から能郷白山への登山道が伸びているので登山者の駐車も多い。
峠には安全地蔵なるお地蔵さんがあった。

今まで気が付かなかったのも不思議だが、今回は心に余裕があったからかもしれない。しかし先ほどから雨がポツポツ落ちてきている。
温見峠。国道を乗り越す谷川。初めの設計段階からこういう構造なんだな。岐阜県側にはこんなんが10ヶ所近くある(ー_ー) さあ下ろう。ヘアピンカーブが多くて狭い道に変わりはないが、驚いたことに岐阜県側の道は格段に良くなっている。舗装がきれいなのだ。これだけでもダウンヒルは安心できる。

お約束の渡河地点も昔ほどのワイルドさはないものの健在であった。大河原に下りてしまえば猫峠への分岐も黒津からの倉見峠もここ数年通っているだけに気心は知れている。何より最近は木材を積んだトラックが通らない。予告されていたとおり大型車通行禁止なのだから・・・