自転車のことを、いつ誰がいい始めたか定かではないが「チャリンコ」などと呼んでいる。ちなみに原付自転車を「ゲンチャリ」、お買い物用自転車を「ママチャリ」と呼ぶんだそうな。
この「チャリンコ(ちゃりんこ)」の語源はいったい何なのか、検証してみよう。
小学館の日本語大辞典によれば、「子供のスリ、盗人仲間の隠語」とある。元をただせば江戸時代の「子供のきんちゃく切り」に始まる隠語であり、自転車とはまったく関係ないのだ。
また終戦後の上野アメ横あたりには大勢の戦災孤児がいて、悪い親分が生活費を稼ぐためにスリや盗みをさせていたという。そうした子供たちを「チャリンコ」と呼んでいたために、年輩の人たちの中にこの「チャリンコ」という言葉に抵抗のある人も多い。
いずれにしてもあまりよい言葉ではないようだ。俗語、隠語とはいえ自転車用に用いる「チャリンコ」。あなたはこの名称に親しみや愛着を感じられますか?
先日、自転車を題材にしたテレビ番組があったので見ていたところ、女性の司会者が、「ママがよく乗っている自転車」と断ったうえで、「ママチャリ」をくり返していた。「チャリンコ」という言葉が出てこなかったのはせめてもの救いだが、公共放送であり、全国ネットということもあって、あえて「ママチャリ」という言葉を選んだ理由が気になり、番組担当者宛に手紙を出して、その意図をうかがってみた。
さっそくその担当者から電話があった。それによると、「ママチャリ」を使った理由について、制作スタッフと話し合い、一般的に使われている言葉なので、自分の判断で使用したという。
担当者は「ママチャリ」の語源は「チャリンコ」に起因していることを認識しており、「チャリンコ」は放送に適さない言葉と判断して使わなかったようだ。いずれにしても問題が指摘された言葉については今後使わない方向で検討するとの回答を得た。
車やバイクにうるさい所ジョージさんや、自転車大好き人間・なぎら健壱さんも、自分の番組で「チャリンコというのはやめよう」とたびたび訴えている。
知り合いの自転車屋さんは「チャリンコを修理してください」というお客さんが来ても、「ウチはチャリンコは扱ってないから」と、断ることにしているという。自転車という人命に関わる乗り物メンテするプライドがそうさせるのだそうだ。
永六輔さんがラジオの番組で自転車の特集を組まれ、8時間にわたり放送されたのは最近のことだ。もちろん「チャリンコ」「ママチャリ」なしのさわやかな放送だった。強い味方の出現によって、自転車の将来は明るい。
そもそも町で売られている自転車は、その価格が安すぎるのではないか。自転車も適正な価格で売られてこそ、大切にしようという気持ちになるのではないだろうか。
そしてチャリンコなどという安易な呼び方が、「二人乗り」や「放置自転車」という形となって社会問題を引き起こし、いまだに自転車が市民権を得られない理由のひとつになっているのではないだろうか。
それにしても「チャリンコ」、なんとかならないものか。それに代わる愛称を心ある人たちで早く考えようではないか。
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