恋人峠(こいととうげ) 180m (2015.10.21) 地図 2.5万図

徳島県美馬市(みまし)穴吹町口山(くちやま)
徳島県美馬市穴吹町口山にある国道492号線、穴吹川の断崖絶壁にある峠。

ネット情報で所在を知ったので半信半疑で行ってみた。仕方ないでしょ。こんなバス停まであるんだから。

しかしこのバス停、実は峠の下流側にあった。
恋人峠のバス停    



峠付近にはこんな橋があった。「恋人橋」。でも読みは「こいとばし」。とすると漢字の「恋人」は当て字の可能性が高くなってくる。

恋人橋 .向こうにあるのはお寺か?
 
読みは「こいとばし」



近くに行ってみると「恋人大師堂」だと。そんなちゃらい大師様なんかいるかぁ?
横の案内には穴吹町が仕掛け人と公表してある。そして「アンフィニベル」と命名したベルの後ろにあるフェンスには「恋人の聖地」よろしく絵馬だかおみくじだかわからないものが結びつけられていた。

恋人大師堂
 
  アンフィニベル



肝心の峠は恋人橋からすぐの所にある恋人洞門の先にあった。
何の変哲もない場所に恋人峠の看板が立てられていた。屋島から落ちのびた平家の公達との別れの場所だという。

しかし「こいと」と呼ぶ地名に「恋人」という漢字を当て字したために、喜んだのが後世の好事家である。漢字の字面から膨らむ妄想は限りない。平家の落人伝説で用命な祖谷渓が奥に控えているだけに平家の公達を持ち出してくるのには笑わせられる。

埼玉県の顔振峠(ごうぶりとうげ)では義経主従が絶景のあまり顔を振り振り登ったという言い伝えがあるそうだが、そんなに都合よく義経が来るはずがない。尖った山の「かあぶり」が訛った説が有力だと思っている。このように東国では義経、西国では平家が人気ということであろう。

「こいと」で思い出すのは落語「立ち切れ線香」。ヒロインの名前が「こいと」である。ほかには「小糸製作所」くらいか。名詞としては大阪弁で「いとさん」は「幼児とか娘さん」。直訳すると「小さな娘さん」。なんかイマイチわからない。

「恋人橋」が架けられた地点には色んなモニュメントがある。しかし「恋人洞門」の下流にあるオーバーハングした崖はさすがに凄い。そしてその下流に「恋人峠」の看板が設置してあるし、「恋人峠」のバス停はもっと下がった所にある。

 恋人洞門
恋人峠の看板
 日奈多峠方向


2.5万図 で穴吹川対岸の中腹に蔭四合地(かげ しごうじ)という集落がある。すでに廃村になっているようだが、左記のサイトによると
『国道から恋人(こいと)橋を渡り、林道を進むと集落に到達。』
とある。文脈から類推すると国道にある現在の恋人橋ではなく、穴吹川にかかっている橋と思われる。つまり現在の恋人橋は後から作られたもので、本来の「恋人(こいと)」地名は谷底あたりのように考えられる。それではどういう意味かと問われてももわからないのが残念である。


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