蚊無峠(かなし)  388m (2003.9.25) 地図 

広島県東広島市福本−安芸津町蚊無
東広島市(旧山陽道の宿場町、西条)と安芸津町とを結ぶ峠である。古代より西条盆地と三津(安芸津町側)との官道として利用され、中世では福成寺(現在の東広島市側)の参詣路、近世では山海の物資の交通路として利用されたようだ。現在は県道32号線のトンネルになっているが、地図では旧道が記されている。

そこでトンネル下から旧道を辿ってみた。きちんと舗装もしてあって、中腹には「まつたけ産業、展示林」なる看板とログハウスがあった。しかしローリング族防止用の舗装や大型廃棄物などがあって、廃な気分は免れない。
安芸津町側から旧道へ入る


峠にはペンキが薄れた「蚊無峠」の看板や「蚊無奥生活環境保全林」の案内板、それにNTT蚊無無線局があって、それなりに現役らしさも伺わせる。

しかし、蚊無峠なんて変てこな名前だなあ!
角川の地名語源辞典などには昔から峠を含めた付近の山稜は藪が多く、蚊の群がる地であることにより、この名が生まれたと言う。と書かれている。蚊がいるのではなく、いなくなって欲しいと思って名付けられたのか?

しかし地名には嘉字や吉名を当てる傾向が多い。それなら蚊無じゃなく、禍無だって良さそうなもの。じゃあ元になる「カナシ」って言葉は本当に「蚊」の意味なんだろうか?
峠名の看板


私が持ってる山中襄太著の地名語源辞典は発音を重視した辞典で、全国的に多くある毛無山(木無山、加無山)は一見はげ山に思えるのだが、殆ど樹木が生い茂った山であるという。

「ケナシ」は「ケ・ナシ」ではなく、「ケナシ」という単語であって、「ケナシ」で捜すと「アイヌ語のケナシ=林野」が土地の様子をよく表現している言葉だという。広島県でもケナシ山が、あちこちにあるのでアイヌ語地名説もバカにはできない。

またある掲示板の『伏尾と初瀬』と題するカキコには
『・・・ところで伏尾は、広島の呉線沿い安芸津(旧「豊田」郡「三津」町で新羅の匂い)の蚊無川の支流を遡った地図上では行止りにも、あります。標高372m野田山の麓です。蚊無・蚊之氏は広島では「ねんごー株」の金師(たたら者)の地であると郷土史家は教えます。タタラ者→多田者となるでしょう。ねんごー株は関西の「根来株」と同じか否か議論されています(既報)。蚊無川は同名の山から発し、上流に印内地名や夫婦滝があります。・・・』 
境界表示 


KJ法で語源探索をしてらっしゃる池田先生にお尋ねしてみると、『”蚊無”は、”か(又はこぉあ)ーなーし)=ka(又はkЭ)−naーsi”で、”より確かに仮の実体のない(又は逆の状態の本物でない)=らしくない)”を意味している』とのことで、『通常あるべき姿ではない状態を言う』のだそうで、よけいわからなくなった。

そんなこんなで結論ははっきりしない。ただ地名を現在使われている漢字や読みで判断するだけではなく、多方面からスポットライトを当てて研究してみる必要があるということなのだ。
蚊無トンネル