廃村徳山紀行  (1997.6.22探訪)  niftyserve 掲載  2002.8.23 更新


 日本一のロックフィルダムとなる徳山ダムの建設はそんなに進んでいないようですがダムサイトと思われる山肌の整地とはるか高みにぽっかりと開いた工事用トンネルなど少しづつ工事が進捗していくようです。そのうちダム湖の下に沈む風景を今の内にできるだけ見ておいた方がよいのではと思いご紹介させていただきます。

★徳山ダム計画★

 岐阜県旧徳山村は揖斐川の上流、福井県との県境の山間地にある陸の孤島といえる村でした。ここに水資源開発を目的に日本一のロックフィルダムを建設する計画は40年ほど前にできました。しかしそれは村がそっくりダム湖に沈む亡村の計画だったのです。

補償交渉・移転先の宅地造成などが終わり村人が集団移転したのは昭和62年のことでした。ダムの計画ができてから故郷徳山を写そうとコンパクトカメラで徳山の風物・生活を写し続けた増山タズ子さんのことなどTV番組でも時々取り上げられています。


★徳山団地★

 村人が集団移転した先は平野に出てきたところにある揖斐川町や糸貫町、岐阜市の北西部に接する本巣町などにそれぞれ徳山団地として新たに造成されました。私は営業でこの徳山団地を担当したことがあります。新居にお邪魔すると各戸の玄関には決まって烏帽子のような切り立った山のパネルが架かっていました。

「すごい山ですね。これは何という山ですか」
「徳山村民に親しまれた冠山(カンムリヤマ)だよ。シンボルみたいなものだね」

私は一度行ってみたいという気持ちが湧きました。



★旧徳山村★

 まだ村民がいた昭和53年の秋、私は一度自転車で訪ねています。横山ダムから人の気配の少ない寂しい谷底の道を遡って谷がぽっかり開けたところが徳山村でした。

折しも運動会が行われていて山里の小さな学校の運動場は大した賑わいです。登山などで泊まるためか傍らに「お宿」の看板も出ています。運動会などとは知らずに出かけた私は村人の熱気にとまどいながらも山村の雰囲気を心に留めて徳山村を後にしました。

その後廃村になってから2度ほど車で出かけました。運動会が行われていた学校も廃校になっています。しかし私が運動会を見たときの高台の道はどこだったんだろう?廃村になって数年で往時の面影が薄くなってしまいました。











     旧徳山村の中心地「本郷」




★本日の徳山★

 何を置いても本日は冠山を見たい。その一念で長大なアプローチはキャンピングカーに任せて最後の詰めだけMTBに託すことにしました。結果的にはそれでも時間が足りませんでした。

徳山へは薄墨桜で有名な根尾村樽見から馬坂峠(標高615m、峠はトンネル)を越えて入るのが一般的です。本日も苦労して、図体のでかいキャンピングカーを運行しました。トンネルは両出口ともカーブしていて野呂川林道の夜叉神トンネルを思わせます。



朽ちかけた吊り橋   廃校になった学校  

揖斐川本流まで降りてくると今までに見られなかったもの、即ちダムサイトらしきものが対岸に見えます。いよいよ「滅び」が近づいたという感がしました。昔の中心地の手前には朽ちかけた吊り橋。繁茂する草に覆われて基礎すらも見えなくなった家の跡。あの時の学校の建物は残っています。火の見櫓も健在です。しかしまだ生活してる人がいます。TVでもやってましたね。町へ出ていったものの徳山の生活が忘れられず舞い戻った人がいるって。
更に川沿いに上流へ行くと途中に徳山村森林組合のワゴン車が野ざらしになっていました。これが本当の「廃エース」なんちゃって(^^ゞ


20kmも走ったでしょうか?才の谷の峠(標高650m)まで来ると目指す冠山(標高1257m)が見えてきます。MTBの登場です。道そのものは全舗装、ガードレールがないだけです。冠山の南斜面の切り立った崖が厳しい自然を感じさせます。しかし山腹には山ぼうしの白い花がアクセントのようになってなかなか綺麗なものです。高度を増すごとに山容は更に険しくなりました。山頂から尾根伝いに目で辿るとこの道の鞍部である冠山峠(標高1050m)が見えます。
1時間後に峠へ到着しました。
車が10台以上駐車しており、驚いたことに中高年のおばさまが20人以上たむろしていました。冠山登山を終えたところのようです。本来なら珈琲の一つも沸かそうかというところですが、冠山の頂上がガスって寒くなってきたのとゆっくりしてるとおばさま達の餌食(--;)になりそうな予感がしたので早々に峠を後にしました。


この後、揖斐川の源流、高倉峠(標高950m最後の1kmほどダートあり)を登って再度福井県を覗き本日は帰途につきました。


★あとがき★

人の手が加わらないと自然がすべてを覆い隠していきます。江戸時代以前から営まれていたという山村の暮らしを見るすべはありませんが、徳山の自然・川の表情は今の内に行かないと見られなくなるかもしれません。



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